まずは『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』を読んでみよう。

 

はい、今日はとってもおもしろい本を紹介しましょう。

タイトルは「わきまえろ、女たち」……ではないですね。

ひれふせ、女たち ミソジニーの論理

 

「わきまえろ」というワードが人口に膾炙しましたからね。

森喜朗さんの写真を帯につけて、キャッチコピーは「わきまえろ、女たち! ミソジニーのロジックを解き明かす」これでベストセラー間違いなしですよ。

 

さて、著者のケイト・マン(女性)は、白人女性がトランプ大統領候補に投票したことにショックを受けました。

「オーマイゴッド! なぜあんなミソジニー野郎に?」

 

ケイトは「まず、ミソジニーの定義を改めよう」と思いました。

単純に「女はみんな大嫌い」ではなく、そこに家父長制システムによる選別があることを見てとったのです。

 

森さんは「ラグビー協会の女理事はわきまえてない。でも、私たちの組織の女性はわきまえている」と発言していましたね。

これは「控え目で黙ってて大人しい女はOK。でも男みたいにハキハキしゃべる女はNG」ということです。

家父長制にとって都合のいい女、わるい女がある。いい女はよしよしする。わるい女は処罰する。

これがミソジニーのロジックだ、ということです。

 

また、ミソジニストの人には、特有の思い込みがあります。

・男は女にあれもしてやった、これもしてやった。

・だから女が家事、育児、雑用、ケア労働、性的奉仕をするのは当然。

・女が発言するときは控えめな態度で、でもそれでいて男を最大級にもちあげなければならない。

・男の「いたずら」くらい許されるべきだろ。

 

・男は常に正しいのだ。男を訴える女がいるって? うーん、その女はきっと何かをたくらんでるんだ。ハニートラップか、美人局だな。

(しくしく泣いてる被害者は同情されても、証拠をそろえて敢然と裁判で闘いはじめると、とたんにバッシングされるというのがコレですね)

 

・女はズルい。楽ばかりしやがって。

・女が性被害を受けてるって? 権利を主張したり、会議で発言したりするなんて「いい女」じゃない。きっと、おれたちから何かを奪おうとしているんだ。

 

なんだか、どこかで聞いたことあるような発言ばかり……。

 

森さんも、自分に従う女は認めてますね。

なぜか? 女の領分にとどまってわきまえているからです。

 

ここで問題なのは、家父長制ムードが、社会全体をおおってるってことですよ。

こういう社会で育った女性は、この価値観をいくらか内面化します。

 

たとえば、伊藤詩織さんに最初のバッシングを行ったのは、女性だそうです。

これはミソジニーの論理を信奉する人=女性のミソジニストといえます。

そう、杉田水脈議員を筆頭として、女性のミソジニストが歴然として存在するのです。

 

そして、性被害を行った男性には「彼を免責しようとする力、ヒムパシー」が働いています。

娘に性的暴行を働いた父親が、いちどは無罪になったのもコレでしょう。

 

そして、著者はある結論にたどりつきます。

トランプに投票した黒人女性とヒスパニック系女性はほとんどいない。だが、白人女性は投票した。

 

アメリカの人種差別社会において、黒人女性は、白人女性よりもっと過酷な差別にさらされている。

それはミソジノワールという。

 

黒人女性は、家父長制にしっぽをふっても、何も得られない。

だが、白人女性はわきまえていれば、家父長制のなかで「いい子、いい子」される可能性がある。

また、彼女たちはトランプのミソジニーをヒムパシーしたのであろう。

 

つまりトランプが当選したのは、アメリカにまだまだ家父長制システムが根づいていることの証拠だ、ということです。

 

私がこの本に感じるのはシンパシー(共感)ですね。

紹介されてるミソジニー発言が、どれもこれも日本とそっくり~。

 

「あなたのねじ曲がった理屈は、この国屈指の大学の教授として相応しくない。生意気な十五歳の少女の理屈です。恨みがましくて、自己中心的で。p395」

「ブロックがそんな人間でないのはわたしがいちばんよく知ってますp262」

(女性が、強姦件を起こした男友達を弁護するシーン)

「おい不細工な売女、ひでぇレイプされてエイズでももらっちまいなp397」

 

「孤独と拒絶、そして満たされることのない欲求を耐え忍ぶ存在を強いられてきました。すべては女の子誰ひとりとして僕に振り向いてくれなかったせいです。他の男たちには優しさもセックスも愛情も与えたのに、僕には何一つくれませんでしたp61」

最後のは、アイラ・ヴィスタ銃乱射事件を起こした人のセリフです。

日本で非モテを標榜し「男性だってつらいんだ」と訴える人のメンタルと似ているような……。

なんでそんなに「ボクは得て当然」って思えるんですか?

 

女性専用車両は男性差別だという人は「女は黙って痴漢されてろ」といいたいのかもしれない……。

 

 

家父長制のもとで「わきまえる」なんて、かっこわるい時代になったのかもしれませんねえ。

これを機に、男女ともに己の中のミソジニー性を見つめてはいかが?

 

 

ちなみに反女性蔑視の署名サイトはこちら。

女性蔑視発言「女性入る会議は時間かかる」森喜朗会長の処遇の検討および再発防止を求めます #ジェンダー平等をレガシーに