部屋の中のゾウとネズミ
人は、常に見たくないものから視線を避ける。
そしてそれは、人生に大きな悪影響を与える……。
とはいっても、具体的に想像できないかもしれませんね。例をあげてみましょう。
Cさん「息子が不登校で困ってるんです」
私「なるほど」
Cさん「休んでもいいよって言ってるんですけど、いつまで続くのか……本人にやりたいことがあれば、それを応援したいんですけれど、なにも決まっていないようですし」
私「それでは打開策を占ってみましょう」
(他の家族との関係がポイント、という卦が出る)
私「ところで、お父様のほうは何といってますか?」
Cさん「ああ、夫はいま、警察署にいます」
私「警察官なんですか」
Cさん「いえ、逮捕されてて。薬物使用の常習犯なんですよね。しばらく入ってるんじゃないですか」
私「大問題ではありませんか」
Cさん「私がなにをいっても無駄ですよ~。いい大人なんだし、しっかりしてもらわないと。アハハ」(なぜだかポジティブ)
Cさん「それより息子のことですよ。あの子は将来もありますしね。父親みたいになってもらっちゃ困るんです。就職でも進学でもいいから、ちゃんとした道を見つけてもらわないと……ああ、心配で心配で……」
私がお客様に「そこちゃうやん!」と突っ込みたくなる気持ちは、おわかりでしょう。
家族の問題というのは非常に厄介でして。
依頼者は通常「家族の何某に問題がある。それを変えたい、そうすれば問題解決する」というスタンスです。
しかしその実、依頼者も含めた家族全員が病んでいます。
病んでると言い切るのもなんですが……「家族全員が、ひとつのシステムにとらわれている」というのは確かです。
「部屋にゾウがいる」という言い方があります。
それは明々白々、誰だって気づく問題です。
しかし、どうやってゾウを追い出せばいいのだ。まったくわからない……誰も、その問題にふれたくありません。
もしかして、これは目の錯覚かもな? ああ、そうだ。そうに違いない。ゾウのことは忘れて、さっさと寝よう。
おや、ここに動物のフンが落ちているぞ。まさかネズミ? 明日、ネズミとりを買ってこよう。
ネズミなんて放っておけばいいじゃないですか。それよりゾウです。今すぐなんとかしないと、家を壊されるかもしれませんよ!
だけど、人はゾウよりネズミのことを問題にしたがる。
なぜなら、心の抵抗がより少ないことだから……。
自分をあざむくのは、いつでも自分。
人は、目の前にゾウがいることすら、スルーできてしまうのです。
そしてネズミとり機を買って、ネズミの足跡観察日記を書いて、毎日ネズミのことでイライラしている。
いいのかなあ、ほんとにそれで。
自分の内側に目を向ければ、その流れは変わります。
ただ、ネズミのことだけ観察していたいのが人情なので……まあ、どうするかはあなた次第ですよ。
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