私が出会った最凶の人物(7) ~去り際が汚い~
そんなある日、専務が「あの家、引っ越ししてるよ! 冷蔵庫を運んでた!」と教えてくれました。
おお、今日が引っ越しの日ですか!
それにしても作男さんといい、為子さんといい、ぜんぜんホウレンソウしないですね!
一言事前に「〇月〇日に退去します。お世話かけました」っていえばいいのにさ。
私は夕方、借家を見に行きました。
「あの人、口だけだからな~。引っ越しも挫折しちゃったんじゃないの?」と心配だったのです。
家の前はわりあいスッキリしていて、荷物はあらかた運び出したみたいです。
よーし、これならまあ安心でしょう。
その時、家の中からもっさりした男性が出てきました。
あら、お手伝いの方かしら? ご苦労様ですね。
男性「なんや、あんた」
私「はい?」
男性「わざわざ見にきたんやろ」
ははーん、こいつ為子さんの兄貴か? 引っ越し作業を手伝ってるんですね。
私「そりゃ、引っ越し終わったかどうかは気になりますよ」
兄貴「なんだよー、嫌味ったらしく見にきてよー、おーう」
チッ、まずいな。丸腰ですよ。殴られたりしたらどうしよー。
でも、すぐに気を取り直して一喝しました。
私「あんたらが居座っとんのは寝たきりの婆さんの家やで! 恥ずかしいと思わんのかっ!!」
するとまたまた、家の中から「がめつそうな」としか形容できないご婦人が出てきました。
為子さんのお母様ですね。
ご婦人「なんや、あんたウソばっかりついて!」
私「あー?」
ご婦人「家賃下げるっていうたやんか!」
私「いったかのー、そんなこと」
すると為子さんの兄貴が横で、下を向きながら
私たちに「もぉ~、やめよーよー、落ち着いて話し合おうよー」と言い出しました。
なんだコイツ。
15秒前におまえから絡んできたんだろうが。わけわからんわ。
ご婦人「あんた手紙に書いてきたやんっ!」
私「そうやったかなー」
兄貴の方は、アメリカ人みたいに大げさに両手をひろげて「はー、やれやれ、女どもの争いには付き合ってられないなー」という雰囲気を醸し出してから、家の中に引っ込みました。
ご婦人「書いとったわっ!(家の中に手紙を取りに戻って)ここにちゃんとあるんやからねっ!」
私「あー、そうねー」
ご婦人「〇〇党の△△さんにいうてやるんやからっ! 覚えときっ!」
私は、思わず口元がほころんでしまいました。
献金してねーのに政治家が動くわけねーだろ。
私「まー、私は引っ越しさえしてくれたらいいんで。後片づけがんばってくださいね!」
念のため、後日私は隣さん夫婦に訴えにいきました。
私「あの人たち、こんなこといってきたんですう~、こわいですう~、威圧行為ですう~」
奥さん「まああ~、50万も払わないで! えげつない人たちやね!」
旦那さん「ハァーー!(驚) なんちゅうふてぶてしいやっちゃ! そんならこっちは□□先生に出てもらうわ!」
隣さんご夫婦は正式に後援してるんです。これで何があっても安心でしょう。
とりあえず一ヶ月で退去完了です。やりましたね!