私が出会った最凶の人物(5) ~事前審査が甘かった~
助けてクマさん! 賃貸管理トラブル即応マニュアル (QP books)
さて、私は為子さんの隣に住む隣さんご夫婦と話していました。
色々と情報収集しなければなりませんからね。
作男さん、為子さんの評判は良くありません。
車の止め方がマナー悪ーい、それを注意したら逆ギレされたーの、子どものしつけが悪ーいだの。
「まさか、あのご夫婦が滞納だなんて……」じゃなくて、
「ああ、滞納か! やっぱりな! 早う追い出さんと!」です。
まあ大変、うちの借家人がご近所に多大な迷惑をかけています。
天道我にあり!
大家(代理)として絶対に追い出す!
それはそれとして、まずあの邪魔っけなワゴンです。
作男さんは「あー、はい、はい」と、返事だけはいいんですが、実行するのやらしないのやら……。
本当はこいつにも滞納ぶんを支払わせたいっ!
でも司法書士の先生が「離婚してるし、別のとこに住んでるから、法律的には難しい」と仰ったんですー。
もし本当にお金がないのなら、私がクレーンを雇って作男さんを立ち合わせるつもりでした。
しかし「勝手に車を動かす」というのは、そもそも法律違反なわけで。
どこの会社も「本人の申し込みでなければ受けられない」という返事でした。
うーむ……。
私は念のため、作男さんの仕事先にも連絡を入れておきました。
私「作男さんがあ~、うちの家賃滞納してて~、おまけに駐車場に壊れた車を置きっぱなしなんですよ~、ひどすぎますよ~、なんとかいってやってくださいよ~」
人事「そういわれても……」
その後しばらくして、為子さんから私の催告に対するクレームが入りました。
催告:相手方に対して一定の行為を請求すること。
為子「元ダンナが『おい、大家がごっつい言うてきたぞ! おまえ電話番号教えたか?!』っていってきたんですけど!」
私「ええ、言いましたよ。だってご本人でなければ動かせないんですし。早くしてくださいよ」
そんなに「ごっつい」(=ひどく、ものすごく)電話したってわけじゃありませんよ。
きちんと淑女らしくお話しましたわ。
ハッ、今の電話番号と実家と職場をおさえられたくらいでキャンキャンいうなや。
とにかく一刻も早くおまえのゴミを持って帰れ!
自宅にて。
専務「ふー……あんな人に家貸さなきゃよかった……」
私「ええ、まったく本当に心からその通りだと思いますよ! 社長がボケて、わけもわからず貸したんですか?」
専務「ダンナの方が元社員だったの~」
私「ん? 社員寮として使ってたってわけですか?」
専務「昔、元ダンナの方は暴行事件を起こしたことがあるのよ。同僚を蹴ったとか……」
私「はあ~? その時点でクビでしょ!」
専務「だって~、行くとこなくてかわいそうだったし~」
私「どうしてそんなに人を見る目がないんですか!」
おまえが諸悪の根源か!
事前審査をしっかりしなかった専務がいちばん悪いですね!