私が出会った最凶の人物(2) ~一円玉が散らばる部屋~
さあ、決戦の日です。
私と司法書士の先生と、その秘書さんで、お宅訪問~。
日当たり良好、二階建て一軒家の日本家屋です。
うっ、すっげえ散らかってるな……まあ子ども多いしこんなもんか?
その時、私は通された和室でヘンなものを見たんですね。
部屋の隅に一円玉がたくさん散らばってます。三十円くらいありそうな。ちょっと山になるくらいの。
……なに、あれ? 何かの開運法? いやそんなの聞いたことないな……。
部屋全体に若干の違和感を感じつつも、話し合いを進めていきます。
私「払えないのはわかってる。そのことはもういい。この家もキレイにしなくていい。ゴミは置いていってかまわないから。いるものだけ持って、一分一秒でも早く出て行ってくれ!!」
話し合いっていうか通告ですね。
んー、家賃回収ですか? いやムリでしょ、この人。
それに何かこの人……凶運オーラっていうんですかね?
外見は若々しくて、決して醜くはありません。
だけど、今すぐにでも縁を切らなきゃ大変なことになるぞオーラがあるんですよ。いやホント。
こういう奴ァ、必ずまた問題を起こすぜ。
家賃回収なんかにこだわってる場合じゃあないですよ。
私がギャンギャンいったあと、先生が人情派刑事(デカ)のように語りかけます。
司法「あんたも、もうここにはおられへんちゅうことはわかっとるやろ?
もっと家賃の安いところに越さないとどうにもならへんで。子どもの教育費もかかってくるんやし。
滞納したぶんは毎月コツコツ払ったらええんやで。分割支払いの取り決めせんか?」
……為子さんもなんだか神妙な顔をしてます。
先生は為子さんに
「じゃ、私らはあと一時間くらい近くにおるんで、心が決まったら連絡してな」と言いおいて、私と秘書さんに外に出るよう促しました。
私は近くの喫茶店で、先生に尋ねました。
私「どーしてあそこでサインさせなかったんですか~? 決まりそうだったのにー」
司法「こういうのは時間を与えないとね。
自分で考えて、自分が決断したんだー! って思わせないと。
でないと、後からアレはイヤだ、こんなことするつもりじゃなかった、って言いだすもんなんや。
これで連絡が来たらホンモノやで」
その時私は、極悪がんぼ2巻で、ソープランドの経営者が、面接にきた女の子をいったん帰らせるシーンを思い出しました。
他のキャラが「なんでや? 今すぐ客をとらせたったらええやないか」と尋ねると、
「アホ、そんなことして訴えられたらどうする? 人間ちゅうのは気が変わって当たり前なんや。
自分で決断してこうするんや、って覚悟がないと、使い物にならへんで」的なセリフを言ってたんですよね。
ほほー、なるほど~。追い出しも同じですね!
私が先生のありがたいお話を拝聴していると、電話がかかってきました。
サインするって。
よっしゃ、第一ラウンドクリアー!