西欧中世宝石誌の世界──アルベルトゥス・マグヌス『鉱物書』を読む

 

とある日のこと、本屋をぶらついているとただならぬオーラのある本を発見しました。

 

西欧中世宝石誌の世界──アルベルトゥス・マグヌス『鉱物書』を読む

 

13世紀、魔法使いにして神学者、オートマータを作成し気象を操った(といわれる)アルベルトゥス・マグヌスが著した『鉱物書』より「宝石篇」をラテン語より全訳!!

 

つまり、怪しい人が書いた中世のパワーストーン事典ってことですね。

これは読まねば!

 

さて、この本は本文+翻訳者の解説文がセットになっています。

読者は読みはじめてすぐ、大槻博士がとんでもないパワーストーン野郎だとわかるでしょう。

 

古来から伝承してきた宝石は、見れば見るほど、語りかければ語りかけるほど、それぞれが何らか特有で不思議なオーラでもって私どもの心に共鳴してまいります。p60

 

その際、いちばん心がけるべきことは、まっさきに利益や強欲の心を宝石に対してむき出しにもたないことです。それこそ最も危険なことなのではないかとおそれ慎むことが大切だと思います。折角の宝石との調和・協和を乱すことになりましょうから。p118

 

神は死んだとか、この水晶玉(クリスタル)は力を失ったというのは、とりもなおさず私どもの心身がそういう神性と何らか共鳴できる聖なる宮居(みやい)を、安楽な我利我欲のために自分自身の内にあるのを見失ったり追放していることにほかならないのではないか、p153

 

また解説の際にはホメオパシー・宝石療法・錬金術など、ソッチ系の該博な知識をさらりと披露しています。

しかも若い頃はインドでヨガの修業をしてたそう。(p193)

 

この方は、2016年に90歳でお亡くなりになりました。

その「若い頃」って……ニューエイジ・ヒッピームーブメントだってまだはじまってないのでは?

マジモンの神秘学者じゃないッすか~。

 

不勉強にして、今までこの方の存在を知りませんでした。

 

この本の良いところは、著者が本気で石の心を信じていること。

「〇〇って伝承があったんだよね~。一応訳出するけど、そんなの信じるなんて無知蒙昧~」なんて斜に構えた態度はつまらないですよ。

 

「人、心あれば、石また心あり」

これが大槻真一郎博士の思想です。

 

そう、鉱石趣味の醍醐味は石と感応することにありますからね!

心が通じ合っていないと、ハリーウィンストンのダイヤも石ころ同然ですよ。

 

 

そんな大槻博士(と、アルベルトゥス・マグヌス)が特に注目してるのがカルセドニー類!

つまりメノウの仲間です。

瑪瑙(アゲート)と玉髄(カルセドニー)は同種で、シマシマがあるのが瑪瑙、ないのが玉髄です。

 

ダイヤモンド一辺倒の現代日本では、最底辺の扱いを受けている石です。

パワーストーン業界でも「メノウ……健康運か家庭運?」くらいですよね。

 

しかし待ってください。あのアレクサンダー大王が持っていたのがクリソプレーズ(緑色のカルセドニー)ですよ。

ダイヤとかルビー、ヘマタイトではないのです。

 

またナポレオンも、カーネリアン(紅玉髄)の印章を大切にしていました。

帝王と賢者が愛している石です。やっぱなにかあるのでは?

 

瑪瑙・玉髄類は、選ばれし者にだけ真の力を分け与えるのではないでしょうか?

……なんて聞くと、欲しくなってしまうでしょう(笑)

 

たとえばシーブルーカルセドニー(特殊な染色加工が行われており、ドイツのある会社でしか作れない)なんて、

自然と人工を融和させた、現代の賢者の石といっていいかもしれませんね。

これからはメノウ・カルセドニーに注目ですよ!

 

他にも大槻博士の遺稿集としては

「ヒルデガルトの宝石論」

「中世宝石賛歌と錬金術―神秘的医薬の展開」

「アラビアの鉱物書」

などなど、たまらないタイトルばかりが揃っています。

 

ちなみにメノウ・カルセドニーの真の美しさを知りたい方は山田英春の本をチェック!

ディープなあなたは読んでみてね! それではまた~。